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名古屋地方裁判所 昭和59年(わ)216号 判決 1984年6月26日

裁判所書記官

村上志

本籍・住居

愛知県西尾市矢曽根町赤地五番地二

会社役員

山本保太郎

大正八年一月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官尾崎明出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金三、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県西尾市矢曽根町赤地五番地二に居住し、同所において山本金型製作所の名称により合成樹脂成型用金型製造業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外し、この資金を用いて架空名義により債券を取得するなどの方法により所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五五年分の実際の所得金額が五、〇八一万六、〇八四円で、これに対する所得税額が二、四三七万七、九〇〇円であるのに、同五六年二月二七日、同市熊味町南十五夜四一番地一所在の西尾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九五七万六、三六四円であり、これに対する所得税額が一八八万四、一〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二、二四九万三、八〇〇円を免れ

第二  同五六年分の実際の所得金額が六、五八〇万二七三円で、これに対する所得税額が三、四三〇万六、七〇〇円であるのに、同五七年三月一〇日、前記西尾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が、一、一七三万六、九〇三円であり、これに対する所得税額が二七二万七、六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三、一五七万九、一〇〇円を免れ

第三  同五七年分の実際の所得金額が八、一五九万一、八四四円で、これに対する所得税額が四、五三五万七、一〇〇円であるのに同五八年三月四日、前記西尾税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、八八二万一、七〇六円であり、これに対する所得税額が六〇〇万二、五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三、九三五万四、六〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一、磯貝良一の検察官に対する供述調書

一、磯貝良一、小川一、依田弘行、山本ヨシエ、山本俊秋の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大西千廣作成の大西化成との取引状況についての上申書

一、石川龍介作成の矢作産業との取引状況についての上申書

一、柘植久一作成の柘植金型製作所との取引状況についての上申書

一、高橋成男作成の棚沢八光社名古屋支社との取引状況についての回答書

一、水谷照彦のチャンピオン工業との取引状況についての回答書

一、山本誠次作成の不二越冶金工業との取引状況についての回答書

一、西嶋直一作成の西嶋金型との取引状況についての回答書

一、近藤好夫作成の三K金型製作所との取引状況についての回答書

一、柘植久一作成の柘植金型製作所との取引状況についての回答書

一、大蔵事務官作成の脱税額の確定(昭和五五年度-五七年度)についての脱税計算書説明資料

一、大蔵事務官作成の(公表普通預金の仕訳除外分について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(決算時の利益調整について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(売上金額及び売掛金について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(不正分の仕入・買掛金について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(仕入・外注加工費について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(減価償却費について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(青色取消損益について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の(外注費の不正について)の査察官調査書

一、大蔵事務官作成の青色申告承認取消の事実についての証明書

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の所得税確定申告の内容(昭和五五年度分)についての証明書

一、大蔵事務官作成の脱税額の確定(昭和五五年度分)についての脱税額計算書

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の所得税確定申告の内容(昭和五六年度分)の証明書

一、大蔵事務官作成の脱税額の確定(昭和五六年度分)についての脱税額計算書

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官作成の所得税確定申告の内容(昭和五七年度分)についての証明書

一、大蔵事務官作成の脱税額の確定(昭和五七年度分)についての脱税額計算書

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の同法二三八条一項に、判示第二、第三の各所為は右改正後の同法二三八条一項にそれぞれ該当するところ、判示第一の所為については犯罪後の法律により刑の変更があったときに当るから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示各所為は、いずれもその免れた所得税の額が五〇〇万円を超えるので、情状により、判示第一の所為については右改正前の所得税法二三八条二項を、判示第二及び第三の各所為についてはいずれも右改正後の所得税法二三八条二項を、判示第二及び第三の各所為についてはいずれも右改正後の所得税法二三八条二項をそれぞれ適用し、各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認められる判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑について同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年二月及び罰金三、〇〇〇万円に処し、同法一八条四項、一項により右罰金を完納することができないときは金五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、右懲役刑につき、諸般の情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 宮平隆介)

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